枇杷

見上げると枇杷の実がなっていました。花は十一月ごろに咲くそうです。小さい頃に、近所でなって落ちていたのを、傷のないのを、掌にそっとつつんで、大事に持ち帰ったことがありました。なあんだ枇杷かと笑われましたが、おかげで、そのあたたかみと美しさが、自分だけのものに思えてよかったのを憶えています。

うるんだオレンジ色をして、割れば艶やかな種子がふたつみつ。味は凡、うすら甘く、これといって表現のほどにもないのですが、見つければ、ああ生ったなったと嬉しくなり、手にとれば、あんな特別が思い出さされるのだから、あれもまた、初夏のあかるい風物詩です。今日もいちりんあなたにどうぞ。

.

やはらかき紙につつまれ枇杷のあり 篠原 梵

.

ツツジ 花言葉「つつしみ」