立春

立春を迎えました。今日は朝からおあつらえむきに春の光が降り注いでいます。また時々には思い出したように雪が降るかもしれないけれど、これから少しずつ、硬く閉じていた花の蕾もいつとなくほぐれてゆく、いよいよに春をあけてゆく、そ...

2月の終い

いつまでも同じ道を行き来してるように思えた冬でしたが、ようやく出口に立ちました。二月は逃げる、三月は去る。去れも然れも人をば知らじ、ただ心地にさおぼゆるなり。自分の気持ち一つで、逃げるとも来るとも思える、二月みそかです。...

春宵十話

古くから多くの文芸や芸術のモチーフにされてきた花なのに、昔の人が語るほど眼にしないのは、都会暮らしの不憫でしょうか。スミレの花を愛してやまなかった数学者 岡潔。数多く残された文筆の中には、花咲く情景、植物の名前がいくたび...

ミツマタ

週末、道すがら眼に飛び込んできた花木に、思わず足を止めました。この春はじめての満開、ミツマタの花です。よおく見ると、沈丁花に似ています。調べたら、まさしくジンチョウゲ科とありました。和紙原料の花だったかなと、つい従いに思...

冬薔薇

ご近所にある冬薔薇を見届けています。ふゆばら、と呼ぶのが好きですが、読みにはふゆそうび、もあり、冬の季語です。「薔薇」と漢字で書いて罰せられるならば、罰金を払ってでも書く。そう語ったのは詩人 塚本邦雄。「はなびら無限 夢...

春雑感

植物がほころぶ季節になりました。自由気ままな花たちの、またとない姿を見つけたときの感動と余韻。まるで残り香のように、胸のこのあたりに続くそれが、今はただ嬉しくて愉しくて。そう、春が来るたび思うのです。人と花が心を響かせあ...

小さな幸せ

まるで庭園のようにヨソイキの花がならぶ花屋の店先で、何と比べても野暮なのに、この花にはいつも景色があります。好むも好まざるも、一面に広がる匂い、花の上を流れる空も、下からたち来る土の温気も、どれも思い出すたびにギュンとな...

梅とうぐいす

魯山人の随筆に『梅とうぐいす』があります。ある日訪ねてきた女流歌人に「うぐいすの歌を作るとき、あなたなら何を配するか?」と尋ねる翁。「うぐいすにはさしずめ梅であろう」と続けると「それはまた陳腐ですね」という歌人に、なかば...

冴え返る

春を感じ始めたこの頃、ふたたび寒さが戻るのを「冴え返る」といいます。冴えるは冷える。彼岸のころにいう「三寒四温」にくらべると、まだわずかに冬が強気な言葉です。 やっとこの二、三日、あたたかな日が続いたかと思えば、翌朝には...

手紙

手紙。詩人 室生犀星は、かつて自分を尋ねてきた堀辰雄に宛て、一枚のはがきを送りました。その一葉は簡潔にして、金沢の季節の報せと、病弱で苦難の多かった辰雄への思いやりに溢れています。思いは深く、語るな書くな。なんて寸言もあ...

オリンピック熱狂

各国選手の活躍に、日本中が盛り上がりを見せた週末。自身を敵に闘い、国を超えて互いの闘志を讃え、労わりあう選手の姿は、目にするたびに込み上げるものがありました。また固唾をのんで見守ってきた人達の、溢れくる涙、弾ける笑顔、会...

雨水

明日は二十四節気の雨水(うすい)。この先は雪も済んで、雨が降るようになりますよ。という知らせです。雨水の頃に雛人形を出して飾ると、良縁に恵まれると言われますね。かつて母が、押入れの奥からゴソゴソと箱を出していたあれも、今...