北原白秋の歌集『桐の花』にある一歌です。
当時20代後半だった白秋は、隣人の人妻と不倫関係になりました。スキャンダラスに報じられた人気作家は、その恋に落ちるとともに名声も地に堕とし、遂には姦通罪で訴えられるまでとなります。
文芸界からも痛烈な罵りを受け、罪人として囚人馬車に載せられ運ばれゆく白秋。そんな中、ふと目に入った赤いダリアの花に、いま身に降りかかる、愛しい人との惜別と世間との隔たりを詠んだのがこの歌だそうです。
日常からの隔離、囚人番号で呼ばれる侘しさなど、収監という特殊な状況がもたらした白秋独自の価値観は、以後の作風にも大きな影響を与えたといいます。代表作『桐の花』は、若かりし白秋の放つ眩い官能、西欧風のロマンティシズムが特徴的。青空文庫にありますよ。ご興味あればぜひ。今日もいちりんあなたにどうぞ。
君と見て一期の別れするときも
ダリアは紅しダリアは紅し.
-北原白秋
ダリア 花言葉「移り気」