藤の花が咲きました。晩春匂やかに、夏を迎えるこの花は、二季をまたいで咲くので二季草(ふたきぐさ)ともいいます。このゆったりとした花房をみて思い出すのは、歌舞伎でも知られる「藤娘」のお衣装。黒の塗笠に藤の花房を傾げ、「男ごころの憎いのは、ほかのおなごに神かけて…」と、浮気性で意のままにならない男心をなじっては、恋しさやまぬ女心を、酔いにまかせて踊ります。この作品の印象があまりに色濃くて、こんな艶やかで芳しく、いじらしい女性にも、ほんのちょっぴり憧れたりして。いとしと書いて藤の花。今日もいちりんあなたにどうぞ。

好いて好かれて はなれぬ仲は
ときわぎの たち帰えらで
きみとわれとか おお嬉し おおうれし
『藤音頭』

フジ 花言葉「恋に酔う」